IBM 「iF Design Award 2019」を受賞

Takumi Kurosawa
8 min readMar 12, 2019

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IBMのメインフレームというカテゴリーのサーバー製品であるIBM z14が、iF Design Award 2019を受賞しました。プロダクト部門での受賞となります。

iF Design Awardは、国際的に権威があり、“デザイン界におけるオスカー賞” とも称されており、「プロダクト」「コミュニケーション」「パッケージ」「インテリア/内装建築」「プロフェッショナル・コンセプト」「サービス・デザイン」「建築」の7分野で、優れたデザインを募集しています。日本企業も多数参加しており、例年、2月から3月にかけて受賞に関するプレスリリースが出されていますので、「iF Design Award」、「iFデザインアワード」、「iFデザイン賞」という文字をご覧になった方もいらっしゃることでしょう。

ちなみに、IBMは、1954年の電動式タイプライターによる初受賞以来、昨年のIBM Design Thinking(サービス・デザイン部門)に至るまで、253の製品やサービスでiF Design Awardを受賞しています。

では、IBM z14を紹介するiF Designのページに書かれている内容を、以下、抜粋します。

・「Z」は「Zero Downtime」の「Z」であり絶対的な信頼性を意味します。
ゼロ・ダウンタイム:障害などでシステムが停止する時間がゼロ。

デザインにおける主要な視覚的要素は、IBM z14におけるハードウェアの進化がもたらす「堅牢性」、「不可侵性(英語通りだと不可入性)」、「拡張性」を意味します。

・エアフロー(空気の流れ)を最大化するとともに、遮音用の厚い吸音材を隠すために、革新的なデザインの可動式のパネルが追加されています。

上述した3つの内容のうち、まず、デザインについて補足します。

IBM z14のデザインは、IBMのデザイン・プリンシパルであるCamillo Sassanoが手がけました。Camillo Sassanoは、IBM z14のデザインについて、「過去に開発したデザイン言語に基づいていて、絶えず進化している」と語っています。

以下の画像では、左下にIBM z14があり、左上のIBM eServer zSeries 900を起点に右下のIBM z13に至るラインナップ(*)が並んでいます。この画像をご覧いただくと、Camillo Sassanoが述べたデザインの進化をご理解いただけるのではないでしょうか。

IBM z14(左下)と、IBM eServer zSeries 900(左上)からIBM z13(右下)までのラインナップ

IBM z14のデザインについてCamillo Sassanoが語る映像も、ぜひ、視聴ください。

次に、ゼロ・ダウンタイムについて補足します。

IBMが、メインフレームのブランド名称に「Z」を冠し始めたのは、2000年に発表した「IBM eServer zSeries」からです。その後、ブランド名称は「IBM System z」「IBM zEnterprise System」「IBM z Systems」そして、現在の「IBM Z」へと変化をつづけますが、小文字から大文字への変化はあっても「Z」は一貫して継承されています。

「ゼロ・ダウンタイム」を意味する「Z」を製品名称に用いている理由は、常に稼働していることが求められる重要な業務にIBMのメインフレームが使用されているからです。分かりやすい例を挙げると、電力会社、ガス会社、金融機関といった社会インフラを支えるサーバーに、IBMのメインフレームが用いられています。

システムやサービスの停止時間がないことの意味や意義は、「メインフレームなしで5分間でも生活できますか?」と題した映像(日本語字幕)をご覧いただくとご理解いただきやすいと思います。

そう。私達は「メインフレームなしでは5分間も生活できない」のです。

最後に、可動式のパネルについて補足します。

筆者の記憶通りであれば、IBM zEnterprise EC12以降のダブル・フレーム筐体モデルのパネルが可動式です。(IBM System z10やIBM zEnterprise 196は可動式ではなかったと思うのです)

IBM Zは水冷方式も採用していますが、空冷方式においては「前面吸気」であり「後方排気」です。

そして、「Origami Design(折り紙デザイン)」と称されている、革新的なデザインのパネル(IBM zEnterprise EC12から登場してIBM z14でも踏襲)も、通気性に配慮した設計となっています。

さらに、以下の4コマ漫画に描かれているように、サーバールームの空気の流れに合わせて吸気を効率的に行うために、パネルが可動式なのです。

らしからぬサーバーデザインに宿るのは自然美か(IBM Mainframe Blogより)

この4コマ漫画は、IBM z13の時代に描いていただいたものですが、IBM z14においても同様です。実際に、パネルを動かした状態で撮影した画像でご確認ください。

iF Design Award 2019を受賞したIBM z14は、デザイン言語に基づく進化が結実して評価されました。そして、IBM メインフレーム自身も進化を続けて現在に至ります。

IBMメインフレームの歴史を紐解くと、最初のメインフレームは、科学技術計算向けに作られたIBM 701になります。そして、ビジネス用途に作られたIBM 702が登場して、用途ごとに2種類のメインフレームが存在していました。

科学技術計算とビジネスの両方の用途を兼ね備え、汎用のメインフレームとして誕生したIBM System/360は、NASAのアポロ計画で利用されたこともあり、ご存知の方もいらっしゃるのではないでしょうか。

奇しくも、今年、2019年は、そのIBM System/360の発表から55周年となります。IBMが最新のテクノロジーを最初に投入するのは、メインフレームであるIBM Zです。常に進化を続け、そして、現在はどこまで進化したのか。以下のブログにてご確認ください。

誕生から55年 IBMメインフレームはどこまで進化しているのか

* 画像左下はIBM z14。IBM z14の背後、左上から、IBM eServer zSeries 900、IBM eServer zSeries 800、IBM eServer zSeries 990、IBM eServer zSeries 890(Mainframe Kidことコナー・クラスコスキが購入した機種)、IBM System z9 EC、IBM Syste z9 BC、IBM System z10 EC、IBM System z10 BC、IBM zEnterprise 196、IBM zEnterprise 114、IBM zEnterprise EC12、IBM zEnterprise BC12、IBM z13(『劇場版ソードアート・オンライン -オーディナル・スケール-』に登場するSAOメインフレームのモチーフ)。

追記

2013年の「IBM THINK exhibit」と「IBM PureFlex System」が現時点での最後の受賞となっているGold Awardは受賞できませんでした。

IBM メインフレームがiF Design Awardを受賞するのは、RISCプロセッサー搭載サーバーであるIBM Power Systemsの上位機種とのセットとして受賞した 2013年のIBM Enterprise以来です。なお、IBM メインフレーム単体としては、2001年のeServer zSeries以来となります。

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Written by Takumi Kurosawa

なんちゃってブロガー兼カメラマンな勤め人。業務用ソーシャルメディアの元「中の人」。(Mediumでの執筆内容は私自身の見解であり、執筆時点で所属していた企業の立場、戦略、意見を代表するものではありません)

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