Linuxが20年前からメインフレームをサポートしているってご存知ですか?
Linuxが誕生したのは1991年。「周年」という視点では、来年、すなわち2021年にLinuxは30周年を迎えることになります。
一方、日本時間の2020年9月15日午後1時過ぎ、米国IBMは「20・5・1」という画像化した数字を配したWebをIBM News Roomに公開しました。
Webのタイトルは「Linux on Z」。「Z」は、メインフレームのカテゴリーに分類されるIBMのサーバー・ブランドである「IBM Z」を指します。つまり、このタイトルは「メインフレームであるIBM Z上で稼動するLinux」のことなのです。
「メインフレーム」という言葉を目にしただけで、ネガティブな印象を持たれる方がいらっしゃると思います。
ただ、業界標準のオープンなオペレーティング・システムであるLinuxを、20年前の2000年からIBMのメインフレームがサポートしている、としたらいかがでしょうか?
実は「20・5・1」の「20」は、20年前を指しています。Linux on ZのWebからリンクしている年表によると、2000年の3月にIBM System/390と呼称するサーバー向けのLinuxソフトウェアとサービスを発表し、同年10月にSUSEがSuSE Linux for S/390を発表しています。
どのような経緯でLinuxがメインフレームをサポートしたのかは、尊敬する北沢さんが@ITに寄稿された「メインフレームでLinuxが動くまで」をご一読いただくほうがわかりやすいので、本記事では割愛します。
IBMのメインフレームは、1970年代から仮想マシン(VM)の機能を提供しているので、2000年の時点で複数のLinuxが稼動する仮想マシンを単一筐体で実現したのです。そして、メインフレームの最新機種であるIBM z15は、仮想サーバーであれば千台規模、コンテナであれば最大200万個を1台に収容できます。以前、あるIBMのエグゼクティブが、IBMのメインフレームを「クラウド・イン・ア・ボックス」と表現したことがあります。ハイブリッドクラウドの採用が広がる今、Linuxサーバーやコンテナを1台にまとめられるIBM Z(現在のメインフレーム)をクラウド基盤用のITインフラとして検討する価値は高いのではないでしょうか?
さて、「20」は上述してきた通りですが、「20・5・1」の「5」は何なのか。これは、5年前の2015年を指しています。
2015年、IBMは、Linux専用サーバー「IBM LinuxONE」を発表しました。最新モデルは「IBM LinuxONE III」という名称ですが、第1世代と第2世代のLinuxONEは、コウテイペンギンとイワトビペンギンの名前を冠したIBM LinuxONE Emperor、IBM LinuxONE Rockhopperというラインナップでした。
第1世代と第2世代のLinuxONEは、まさに、タックスというペンギンのマスコットがいるLinux向けの専用機ならではの命名だったのです。
では、「20・5・1」の「1」は何か。1年前ということになりますが、去年、何があったのか。
2019年、IBMとRed Hatは、IBM ZとIBM LinuxONE向けのRed Hat OpenShift Container Platformを2020年第1四半期の初頭に提供する、という発表を行いました。「1」は、このことを指しているのです。
そして、今年の2月、Red Hat OpenShiftがIBM ZとIBM LinuxONE上で利用可能になりました。
ところで、米国IBMが公開したWebのタイトルは「Linux on Z」ですが、20年前の時点では、上述した「SuSE Linux for S/390」のように「for」でした。証拠もあります。今日、慌てて発掘して撮影した置物の写真でご確認ください。この「for」から「on」への変化そのものが、LinuxとIBMメインフレームのコラボレーションの深化(進化ではなく)を物語っているのかもしれませんね。